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連続生産における混合工程シミュレーション
髙垣 恵介
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2018 年 54 巻 10 号 p. 987

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抄録

医薬品の連続生産とは,連続的に原料又はそれらの混合物を製造工程内に供給し,生産物を継続的に生産する方法である.連続生産は,開発時の機器と実生産機が同一で,スケールアップが不要等の利点があるため,近年,注目を集めている.一方で連続生産は,従来のバッチ式のように全量を混合して均質化できないため,連続製造期間中,継続的に目標とする品質を確認し,保証する必要がある.
連続製造中の製剤品質に影響する因子の1つに,原薬・原料供給量の変動がある(図1).この変動により生じた不良部は,製造工程中で検知し,確実に工程外に排出できるような手段を講じなければならない.検知する手段として非破壊,かつ,リアルタイムで分析可能な技術であるprocess analytical technology(PAT)ツールや製造プロセス中の粉体がどのように移動(拡散)するかを数式で表現する予測モデル化がある.これらの技術を併せて,工程後の原薬含量等の品質を継続的に監視しながら,さらに工程中の原薬含量等の推移や,それらが後工程にどのように影響するのかを予測することで,連続工程中の製剤品質を保証する.
原薬・原料供給量の変動に対応するには,不良部が工程のどの位置にどの程度存在するかを示す滞留時間分布(residence time distribution: RTD)を把握しておくことが重要になる.このRTDを把握するためには,PATツールから得られた実測データを基にRTD予測モデルを構築し,シミュレーションする手法が一般的である.これまでに幾つかのRTD予測モデルが報告されているが,今回は,連続混合工程に適用できる最新の予測モデルを提案したGalbraithらの報告について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「医薬品の連続生産を導入する際の考え方について(暫定案)」,2018年3月30日
2) Galbraith S. C. et al., Pharm. Dev. Technol., in press(2018).
3) Singh R. et al., Int. J. Pharm., 438, 307-326(2012).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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