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マススペクトロメトリーによる薬物-脂質-膜タンパク質相互作用の直接観測
土川 博史
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2018 年 54 巻 12 号 p. 1163

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抄録

近年,脂質―膜タンパク質相互作用は,リン脂質がGタンパク質共役型受容体の機能制御に関与することが明らかとなったことから,新たな制御分子の開発という観点でも特に注目を集めている.しかし,多くの脂質分子が混在する膜環境において,特異的な作用を有する脂質とそれ以外の脂質とを区別することは容易ではなく,現在の黄金律ともいえる低温電子顕微鏡やX線結晶解析を用いても,その観測自体が挑戦的である.
最近になり,脂質―膜タンパク質相互作用を解析する有効な手段の1つとしてマススペクトロメトリーによる分析手法が開発された.本稿では,穏和な条件によりタンパク質を複合体の状態で質量分析することが可能なネイティブマススペクトロメトリーにより,ペプチドグリカン(peptidoglycan: PG)の生合成に関わる脂質性分子と膜タンパク質の相互作用に関して新知見が得られた例について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Dawaliby R. et al., Nat. Chem. Biol., 12, 35-39(2016).
2) Laganowsky A. et al., Nature, 510, 172-175(2014).
3) Bolla J. R. et al., Nat. Chem., 10, 363-371(2018).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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