ファルマシア
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多環性炭化水素天然物waihoenseneの全合成
太田 浩一朗
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2018 年 54 巻 2 号 p. 163

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抄録

Waihoensene (1)は1997年,Weaversらによりマキ科の常緑低木樹Podocarpus totara var waihoensisから単離された四環性ジテルペンである(図1).1はトリキナン(トリシクロペンタノイドの総称)にシクロヘキサンが縮環した歪んだ骨格上に四連続した第四級炭素を含む特異な構造を有する.これまでに本骨格を有する天然物の全合成は報告されておらず,極めて挑戦的な合成標的である.2011年Leeらは,分子内の適切な位置にジアゾ基を有するアレンから生じるビラジカル中間体であるトリメチレンメタン(trimethylenemethane:TMM)ジイルを経るタンデム環化反応によりトリキナンが得られることを見いだした.今回彼らは,予めシクロヘキサンを有する基質に本反応を適用し,(±)-1の全合成を達成したので,以下に紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Clarke D. B. et al., Tetrahedron Lett., 38, 4297-4300(1997).
2) Kang T. et al., J. Am. Chem. Soc., 133, 18050-18053(2011).
3) Lee H. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 56, 8254-8257(2017).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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