2018 年 54 巻 6 号 p. 555-559
T細胞には主に,ウイルスや病原体の排除に重要な働きをするヘルパーT細胞やキラーT細胞のほか,免疫反応を抑制する,いわゆる“火消し”の役割を果たす制御性T細胞,自己免疫疾患にかかわるナチュラルキラーT細胞などの亜集団がある.これらのT細胞亜集団は骨髄由来の前駆細胞が胸腺で分化成熟して構成される.胸腺のT細胞分化過程ではT細胞抗原受容体(TCR)の補助分子であるCD4とCD8の発現調整が厳密に行われる.我々はゲノムオーガナイザーとして知られる核タンパクSpecial AT-Rich Sequence Binding Protein 1(SATB1)がこれらのT細胞亜集団の分化制御に重要な働きをしていることを見いだした.