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高感度バイオイメージングのための残光蛍光性ポリマーナノ粒子
西田 慶
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2018 年 54 巻 9 号 p. 901

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抄録

蛍光イメージングは,細胞や生体内において観察や定量が困難な物質の情報を非侵襲的に可視化することが可能であり,生命科学研究や診断・創薬の分野で重要な技術である.緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)などは,タンパク質のイメージングに広く利用されているが,可視光領域に蛍光波長を示すため組織深部のイメージングが困難である.組織深部を観察するためには,組織透過性の高い近赤外光の利用が適している.しかし,近赤外領域で励起・蛍光特性を示す蛍光材料の多くは蛍光強度が低く,感度に課題がある.このような問題に対し,励起光照射後も長時間蛍光を維持する残光蛍光が注目されている.残光蛍光は,励起光による自家蛍光や散乱が最小限に抑えられるため,高感度な検出が期待される.しかし,残光蛍光体の多くは希土類の無機粒子であり,毒性の問題が指摘されている.
近年,導電性高分子を用いたポリマーナノ粒子による残光蛍光体が報告された.本ポリマーナノ粒子は細胞毒性が低く,生分解性であることから生体適合性に優れると考えられる.本稿では,Miaoらが報告した近赤外領域で残光蛍光を示すポリマーナノ粒子について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Chermont Q. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 104, 9266-9271(2007).
2) Miao Q. et al., Nat. Biotech., 35, 1102-1110(2017).
3) Mei J. et al., J. Am. Chem. Soc., 135, 6724-6746(2013).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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