ファルマシア
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妊娠期の免疫活性化により生じる神経発達障害のメカニズムに迫る
横田 理
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2018 年 54 巻 9 号 p. 903

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抄録

母児感染など妊娠期間中に生じる母体免疫活性化(maternal immune activation:MIA)は,産まれてくる子どもの精神神経疾患発症のトリガーとなる.MIAの検証には,免疫原として,インターフェロン誘導薬であるポリイノシン・ポリシチジン酸(PolyI:C)が使用されている.疫学や前臨床試験データによると,MIAにより不安様行動の惹起,認知機能の低下などが引き起こされることが報告されている.しかし,MIAにより生じる脳神経疾患発症に起因する分子機構についてはよく分かっていない.最近では,MIAによって生じる分子機構の解明を目的としたトランスクリプトームやプロテオミクスを用いた仔の脳の網羅的発現解析が行われている.しかし,これらの分子変化から起こり得る機能的な影響を捉えるまでには至っていない.
本稿では,MIAが仔のシナプス形成・機能にどのような影響を及ぼすのか,また,神経発達障害に共通して認められるGABA神経系の興奮性/抑制性スイッチについて解析を行ったCorradiniらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Knuesel I. et al., Nat. Rev. Neurol., 10, 643-660(2014).
2) Corradini I. et al., Biol. Psychiatry. In press(2017).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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