ファルマシア
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イースト菌SF3B1複合体を用いたスプライシング阻害評価
吉川 祐介
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2019 年 55 巻 10 号 p. 977

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抄録

スプライシングは,mRNA前駆体からイントロンを除去して成熟mRNAを産生する遺伝子発現において必須の工程である.近年,特定のがん種でスプライシング因子(スプライソソーム)の変異が報告されるなど,スプライシングは新たな抗がん剤の創薬ターゲットとして注目されている.
スプライソソームはU1〜U5の5つのタンパク質因子から構成されているが,U2構成因子の1つsplicing factor 3B subunit 1(SF3B1)-RNA複合体の機能制御が近年注目を集めている.例えば,2007年には天然物pladienolide B(1)がSF3B1-RNA複合体のスプライシングの進行を阻害し,強力ながん細胞増殖抑制活性を示すことが報告された.また,1とヒトSF3B1タンパク複合体とのX線共結晶構造解析が報告され,1とSF3B1の結合部位周辺アミノ酸配列情報が明らかにされた.本稿ではSarahらが最近報告した,イースト菌SF3B1タンパク複合体を用いたスプライシング阻害活性評価系の構築について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Yoshida M. et al., Nat. Chem. Biol., 3, 570-575(2007).
2) Constantin C. et al., Mol. Cell, 70, 265-273(2018).
3) Sarah R. H. et al., Cell Chem. Biol., 26, 443-448(2019).

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© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
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