ペニシリンの発見以来,感染症治療において人類は天然物の恩恵を受けてきた.現在においても放線菌等の微生物や植物が創り出す二次代謝産物は,新しい感染症治療薬のシーズとしての可能性を秘めている.一方で,様々な製薬企業や研究者がありとあらゆる微生物や植物を用いた有用物質のスクリーニングを行ってきた経緯から,構造未知の化合物を新たに見つけることもなかなか困難になってきている.また求められる感染症治療薬のニーズも様々なうえ,耐性菌に効果があり,かつ耐性菌が出現しにくいといった特性を持ったものでないと開発を始めることすら難しい状況である.
本稿では天然物そのもの,または天然物からの誘導体を用いた創薬研究の例について紹介し,話題提供したい.