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腎症・腎線維化におけるASK1の関与と治療薬開発への展開
神谷 哲朗
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キーワード: 糖尿病性腎症, ASK1, GS-444217
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2019 年 55 巻 4 号 p. 346

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抄録

糖尿病性腎症は糖尿病の重大合併症の1つであり,糸球体濾過量の低下や腎組織の線維化など機能的および形態的な異常を伴う疾患である.糖尿病性腎症の治療は,その基礎疾患となる高血圧や脂質異常症の改善が基礎となるが,その治療が十分に達成されているとは言えない.また,本疾患の増悪は透析導入の重大なリスクとなることから,その治療薬を開発することは喫緊の課題である.糖尿病性腎症罹患者の腎組織は,活性酸素種(ROS)の産生亢進に起因する酸化ストレス(OS)に曝されており,酸化ストレスをトリガーとする一連の炎症反応が腎組織障害を誘発する原因の1つとして考えられている.
Apoptosis signal-regulating kinase 1(ASK1)は組織に普遍的に発現するタンパク質リン酸化酵素であり,酸化ストレス誘導性のアポトーシスや炎症反応に関与することが知られている.また,組織線維化に関与するp38などのリン酸化酵素の活性化を促進することから,糖尿病性腎症治療のターゲット分子として注目されている.本稿では,Lilesらが報告した新規ASK1阻害剤の糖尿病性腎症への効果について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Reidy K. et al., J. Clin. Invest., 124, 2333-2340(2014).
2) Tobiume K. et al., EMBO Rep., 2, 222-228(2001).
3) Ma FY. et al., Am. J. Physiol. Renal Physiol., 293, 1556-1563(2007).
4) Liles JT. et al., J. Clin. Invest., 128, 4485-4500(2018).

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© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
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