2019 年 55 巻 5 号 p. 453
滝澤博士は、スピロ化合物の効率合成とその不斉触媒骨格への導入にも積極的に取り組み、スピロ型不斉配位子、イオン性液体、および有機触媒の開発に成功した。スピロ型不斉触媒は、類似構造のビフェニル骨格で問題となる軸性キラリティーのラセミ化が起こり難い。剛直なスピロ骨格は、目的とする反応中間体への効率的変換を促し、望まない遷移状態を回避できる。反応基質がキラルポケットに深く取り込まれるため高い不斉誘起能を示す等、スピロ型不斉触媒の有用性を様々な新規ドミノ反応に適用することで明らかにした。
以上のように、滝澤博士は、有用性・新規性・独創性を強く意識して、環境調和型不斉触媒反応の開発に取り組み、新しい領域の開拓につながる研究成果を挙げている。今回の受賞を機に更なる飛躍を期待する。