ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
トピックス
1次繊毛形成の正常化はダウン症候群の治療標的に成り得るか?
篠原 広志
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 55 巻 7 号 p. 703

詳細
抄録

ダウン症候群は約700人に1人の割合で発症する遺伝子疾患である.症状として精神発達遅滞,筋緊張低下,頭部顔面異常,成長障害,心疾患などが認められる.原因は21番染色体が通常より1本多い3本になること,いわゆる21トリソミーである.また,21トリソミーはダウン症候群のみならず,繊毛関連疾患を引き起こすことが知られている.繊毛関連疾患では,細胞の増殖・分化,四肢発生,幹細胞の維持に関与するソニックヘッジホッグ(sonic hedgehog: Shh)の変異によりShhシグナル伝達に破綻が生じることで,心臓・骨格系・脳に異常が認められる.ダウン症候群でShhシグナルの低下が認められる知見もあるが,ダウン症候群でのShhシグナル伝達破綻と1次繊毛形成不全との関連性については不明であった.
本稿では,21トリソミーに起因した遺伝子異常により,中心体およびそれを基盤とした1次繊毛の形成が阻害され,Shhシグナル伝達破綻およびダウン症候群の発症につながることを示したGalatiらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Galati D. F. et al., Dev. Cell, 46, 641-650(2018).
2) Currier D. G. et al., Prog. Brain Res., 197, 223-236(2012).
3) Nguyen T. L. et al., Dis. Model. Mech., 11, doi:10. 1242/dmm.035634(2018).

著者関連情報
© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top