ファルマシア
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くすりの博物館をゆく
第28回 科学技術館
池田 幸弘
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2019 年 55 巻 9 号 p. 878-879

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抄録

九段下駅で降り,内堀通りを歩く.平日はビジネスパーソンが溢れている街も,休日では行き交う車もほとんどなく,皇居ランナーが心地良さそうに堀端をジョギングしている.清水門から北の丸公園に入る.門の名は,この辺りで清水が湧き出ていたからとも,清水寺という古寺があったからとも言われている.いずれにせよ,江戸城築城以前のこのあたりは海浜に近く,また水も澱み気味だったので,貴重な水源であったのだろう.この門は,振袖火事と呼ばれる1657年(明暦3年)の大火で焼失したが,その翌年1658年(万治元年)に再建されたものである.400年近い歴史を感じさせる重厚な門をくぐると,ほとんど人影もなく,ただセミの声だけが静かに響き渡っている.東京の真ん中にいるとはにわかには信じられない雰囲気のなか,しばし静謐を楽しんだ後,科学技術館へ向かう.

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© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
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