ファルマシア
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繊維化しない新しいインスリン製剤の合成
鈴木 浩典
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2020 年 56 巻 10 号 p. 957

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抄録

糖尿病は血液中の血糖が慢性的に多い状態となり,血糖値が一定の基準を超えている状態を指す疾患である.生活習慣とは無関係の自己免疫疾患等を起因とする1型と,食生活等に起因する2型とに分類される.1型は絶対的にインスリン注射が必要であり,2型は運動や食事療法,血糖降下薬の投与による血糖値低下が不十分な場合にインスリン投与が行われる.遺伝子工学の発展に伴い,健常人から分泌されるインスリンと同じアミノ酸配列を持ったヒトインスリン製剤が用いられてきた.
近年ではアミノ酸の一部を置換することで,血糖降下作用はそのままに,薬物動態を変えたインスリンアナログ製剤が用いられている.しかしこれらの製剤は,保管中にアミロイド様の線維を形成してしまい,そのような物性変化によって適切な投与量を維持できないことから,製剤の有効期間を短縮し期限切れ医薬品を生み出す原因となっている.タンパク質製剤の体内動態を変える手段として,ポリエチレングリコールや糖鎖などの高分子修飾が用いられており,代表的なものとして,ペグインターフェロンやダルベポエチンアルファなどが挙げられる.本稿では,糖鎖修飾によってインスリンアナログの線維形成を抑制する手法が報告されたので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Zhou C. et al., J. Pharm. Sci., 105, 551-558(2016).
2) Hossain M. A. et al., J. Am. Chem. Soc., 142, 1164-1169(2020).

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© 2020 The Pharmaceutical Society of Japan
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