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ジンコウ(沈香)の品質評価は何を指標とすればいいか?
成川 佑次
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2020 年 56 巻 3 号 p. 255

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抄録

ジンコウ(沈香)は貴重な香木としてお香などに用いられる.一方で薬としても広く用いられ,漢方では喘四君子湯や丁香柿蒂湯などに配剤されるほか,種々の一般用医薬品にも配合されている.香木としての品質は香りの良し悪しで評価されるべきであるが,薬としてのジンコウの品質評価には何を指標とすればいいのだろうか?日本薬局方に収載されていない生薬の品質を定めている公定書である日本薬局方外生薬規格(局外生規)2018では,ジンコウの基原は「Aquilaria agallocha, A. crasna, A. malaccensis, A. sinensisまたはA. filaria(Thymelaeaceae,ジンチョウゲ科)の材,特にその辺材の材質中に黒色の樹脂が沈着したもの」と規定している.これは植物そのものというよりは,細菌などに感染した際に宿主側の防御応答により生じた樹脂が必要であることを示している.近年ではワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する条約)の附属書ⅡにAquilaria属植物全種が掲載され国際商取引が規制されていることから,植栽されたAquilaria属植物に傷をつけ,菌を植え付けることによって人工のジンコウを作り出す試みが行われている.今回,樹脂形成に着目し,ジンコウの品質評価法について検討した報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) 厚生労働省,日本薬局方外生薬規格2018.
2) Takamatsu S., Ito M., J. Nat. Med., 74, in press.
3) Takamatsu S., Ito M., J. Nat. Med., 72,537-541(2018).

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© 2020 The Pharmaceutical Society of Japan
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