ファルマシア
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肝臓-心臓連結チップによる薬剤性催不整脈リスクの新たな理解
荒木 徹朗
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2020 年 56 巻 5 号 p. 444

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抄録

薬物による心毒性,特にhuman ether-a-go-go related gene(hERG)チャネル阻害によるQT延長は,torsade de pointesと呼ばれる重度の不整脈を引き起こし,最悪の場合死に至ることがあるため,毒性評価において最も重要な評価項目の1つである.一方で,非臨床で慎重なスクリーニングを行った結果,本来臨床において催不整脈リスクがない化合物を非臨床ステージで落としてしまっている可能性が指摘されてきた.また,動物を用いた評価系は,薬物代謝に種差がある場合など,臨床におけるリスクを予測するには限界がある.以上のことから,医薬品研究開発の現場においては,臨床への外挿性が高い,新規の評価系が強く求められてきた.
Microphysiological system(MPS)はorgan(s)on-a-chip,我が国では生体模倣システムとも呼ばれており,前述のような課題を克服する新規技術として注目されている.本稿では,ヒトiPS細胞由来心筋細胞をMPSで培養し,さらにヒト初代肝細胞との共培養により,薬物代謝を加味した催不整脈リスク評価法を構築したMcAleerらの報告を紹介する.なお本報告は,Hesperosという米国のMPSベンチャーと英アストラゼネカ(AZ)社を中心とした共同研究である.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Takasuna K. et al., J. Pharmacol. Toxicol. Methods, 83, 42-54(2017).
2) Kimura H. et al., Drug Metab. Pharmacokinet., 33, 43-48(2018).
3) 酒井康行,Farumashia, 55, 395-399(2019).
4) McAleer C. W. et al., Sci. Rep., 9, 9619(2019).

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© 2020 The Pharmaceutical Society of Japan
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