ファルマシア
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立体構造情報に基づいたPROTAC設計:新たながん治療の可能性
郡 聡実
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2020 年 56 巻 6 号 p. 565

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抄録

Proteolysis targeting chimeras(PROTACs)は,細胞内で不要になったタンパク質を分解するユビキチンプロテアソーム経路を利用し,標的タンパク質の分解を誘導する新しい技術である.E3リガーゼは標的となる分子と相互作用し,分解の目印となるユビキチンを標的分子に付加する.PROTACは,標的タンパク質結合リガンドとE3リガーゼ結合リガンドをリンカーで連結した二機能性分子である.分解の標的となるタンパク質とPROTAC,E3リガーゼの三者複合体の形成は,標的タンパク質を人為的にユビキチン化し,プロテアソーム経路で分解する.タンパク質の機能を阻害する従来の低分子薬の標的は,基質結合部位や活性部位を有するタンパク質のみであった.一方,PROTACは非機能的ドメインも分解できるため,疾患の原因となる全てのタンパク質を標的にできる.本稿では,クロマチンリモデリング因子BAF複合体を標的としたPROTACの設計について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Farnaby W. et al., Nat. Chem. Biol., 15, 672-680(2019).
2) Soares P. et al., J. Med. Chem., 61,599-618(2018).

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© 2020 The Pharmaceutical Society of Japan
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