2020 年 56 巻 8 号 p. 783
生物は進化の過程において数々の食糧難に直面し,それを克服するために糖や脂肪などのエネルギー源を無駄なく再利用するシステムを獲得してきたが,飢餓状態での生体防御,特に免疫システムの役割については未知の部分が多く残る.本稿では,飢餓状態を模したカロリー制限マウスにおいて,メモリーT細胞が脾臓などの二次リンパ組織から骨髄へ移動し,エネルギーの消費を抑えつつ,病原体への感染に備えた状態になることを明らかにしたCollinsらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Collins N. et al., Cell, 178, 1088-1101(2019).
2) Han S. J. et al., Immunity, 47, 1154-1168(2017).
3) Maurya R et al., Front. Immunol., 9, 2741(2018).