ファルマシア
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DNA損傷の修復:酵素の活性中心が新しくできるメカニズムを解明
黒川 優
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2020 年 56 巻 9 号 p. 870

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抄録

ポリADP-リボースポリメラーゼ1および2(PARP1/2)は1本鎖DNAの損傷を感知し修復経路を活性化する.PARP阻害剤は,BRCA1/2遺伝子の変異によってDNA損傷の修復に異常をきたしたがん細胞の維持療法に用いられている.細胞内においてDNAの損傷が生じると,PARPによってヒストンタンパク質のセリン残基がADP-リボシル化を受けるが,in vitroにおいて精製したPARP1はヒストンタンパク質のADP-リボシル化効率が著しく悪い.過去にAhelらはin vitroにおいてhistone PARylation factor 1(HPF1)がPARP1の基質特異性をセリン残基に変えることを発見し,HPF1が生理的にPARP1の活性に重要であると報告した.本稿では,そのグループがX線結晶構造解析,NMR,生化学的解析によってHPF1がPARP1の活性中心に基質結合部位と触媒残基を提供していることを報告しているので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Gibbs-Seymour I. et al., Mol. Cell, 62, 432-442(2016).
2) Suskiewicz M. J. et al., Nature, 579, 598-602(2020).

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© 2020 The Pharmaceutical Society of Japan
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