ファルマシア
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質量分析を活用した次世代ハイスループットスクリーニング法
山﨑 由貴
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2021 年 57 巻 12 号 p. 1135

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抄録

創薬研究の初期段階において,ヒット化合物の同定とそれに続くリード化合物への最適化は極めて重要なプロセスである.ヒット化合物の探索にはハイスループットスクリーニング(HTS)が活用されているが,HTSの多くは蛍光・発光法や放射性物質を利用したバイオケミカルアッセイであり,評価系に依存した偽陽性と偽陰性が大きな課題となっている.この解決策として,近年,質量分析(MS)を用いたHTSが注目されている.MSを用いたバイオケミカルアッセイには,複数の標的分子を同時に,かつラベルフリーで直接検出できるという利点がある.一方で,従来のMSアッセイでは,試料中に含まれる塩や界面活性剤によるイオン化抑制を防止するため,試料の前処理やクロマトグラフィーによる分離が必要となり,スループット性が低いことが問題となっている.そこで近年,新たなイオン化法を活用することにより,クロマトグラフィーフリーでスループット性の高いMSシステムを構築する試みがなされている.本稿では,赤外マトリックス支援レーザー脱離エレクトロスプレーイオン化質量分析(IR-MALDESI-MS)を用いてHTS法を確立したPanらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Monge M. E. et al., Chem. Rev., 113, 2269-2308(2013).
2) Fan P. et al., Anal. Chem., 93, 6792-6800(2021).

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© 2021 The Pharmaceutical Society of Japan
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