ファルマシア
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がん転移機序の新たな可能性:好中球細胞外トラップの関与
安田 浩之
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2021 年 57 巻 4 号 p. 321

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抄録

好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)とは,細胞内のDNAやヒストンを顆粒球タンパク質とともに細胞外に放出する現象であり,異物を捉え,殺菌する自然免疫応答の一種として発見された.近年,関節リウマチなどの自己免疫性疾患や糖尿病,がんなどの炎症性疾患においてその誘導が確認され,NETsは様々な疾患の増悪に関与する因子として考えられている.細胞外に放出されたDNA(NET-DNA)は血管壁の傷害や血栓の誘発に関与すると考えられているが,toll-like receptor 9など,DNAと結合して活性化する受容体も存在することから,NET-DNAは病態発症・増悪機序の細胞外シグナル因子として注目されるようになった.特にがん転移において,幾つかのマウスモデルでNET-DNAの関与が示唆されている.本稿では,NET-DNAと結合することが確認されたcoiled-coil domain containing protein 25(CCDC25)の乳がんの肝転移における役割をまとめたYangらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Brinkmann V. et al., Science, 303, 1532-1535(2004).
2) Albrengues J. et al., Science, 361, eaao4227(2018).
3) Yang L. et al., Nature, 583, 133-138(2020).

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© 2021 The Pharmaceutical Society of Japan
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