2021 年 57 巻 5 号 p. 377-381
ウイルス性出血熱といえば,近年では散発的にアフリカで流行しているエボラ出血熱のことを思い浮かべる方も多いと思われる.世界的にみれば,ほかにもラッサ熱,マールブルグ病,クリミアコンゴ出血熱などが知られているが,これらの疾患はそのほとんどが海外での流行であって,これまでの日本においては輸入感染症として認識されるに過ぎなかった.
重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)は2011年に中国東北部で発見された新しいウイルス性出血熱で,驚くべきことに日本国内,特に西日本地域にも流行していることがわかってきた.マダニ媒介性感染症と考えられているが,ネコやイヌといった伴侶動物を介した感染事例も相次いで報告されており,私たちの日常生活においても感染するリスクはゼロではない.