2021 年 57 巻 6 号 p. 500-504
生物は高度に制御された化学反応の組み合わせによって機能する、極めて精緻かつ玄妙なシステムであると語られることが多い。もちろんそれは事実ではあるが、生体は高純度な物質のみによって構成されたきれいな系ではなく、雑多な分子が多数集まって構成された不純物の多い系である。そのため酵素による制御を受けていない「美しくない」化学反応がしばしば起こり、それが加齢性疾患等の原因となることが指摘されている。一方で非酵素的反応は制御されていないがゆえに実験的な解析が難しく、分析技術が未だ発展の途中にある。そこで、本稿では計算化学手法による非酵素的反応の解析について紹介する。