ファルマシア
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オキシトシン応答と社会的行動
𠮷見 陽
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2021 年 57 巻 7 号 p. 671

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抄録

神経ペプチドであるオキシトシンは,子宮収縮・乳汁分泌促進作用のほかに,ストレスの緩和や向社会的行動の発達に関与する.社会的コミュニケーションや対人的・情緒的関係の困難,および限局された行動・興味などを主徴とする自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder: ASD)に対し,感情の認識や共感,社会的認知などの中核症状改善作用を期待してオキシトシン製剤の開発が進められている.ASDの発症は遺伝要因の寄与が大きく,シナプスタンパク質,翻訳調節,クロマチン修飾などに関わる遺伝子変異の関与が明らかにされてきた.しかし,ASD関連遺伝子変異がオキシトシン作動性シグナル伝達機構を制御し,その結果としてASDの発症に寄与しているかどうかは明らかにされていない.本稿では,ASD関連遺伝子であるニューロリギン3(neuroligin 3: Nlgn3)の機能喪失がオキシトシン応答と社会的行動の変容に関与することを明らかにしたHörnbergらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Walum H., Young L. J., Nat. Rev. Neurosci., 19, 643-654(2018).
2) Zaslavsky K. et al., Nat. Neurosci., 22, 556-564(2019).
3) Hörnberg H. et al., Nature, 584, 252-256(2020).
4) Bariselli S. et al., Nat. Commun., 9, 3173(2018).

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© 2021 The Pharmaceutical Society of Japan
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