ファルマシア
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熱力学の壁を超えろ! :内部アルケンから末端アルケンへの異性化
安井 猛
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2022 年 58 巻 10 号 p. 974

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抄録

アルケンは多様な化学変換の対象となる重要な官能基の1つであり,その導入や誘導化の例は枚挙に暇がない.なかでも,アルケンの位置異性化は原子効率が高く,多様なアルケンの合成や幅広い誘導化に寄与する魅力的な反応である.しかし内部アルケンから末端アルケンへの異性化は,熱力学的に不利なため直接的な変換は難しく,段階的な変換を余儀なくされていた.一方,近年目覚ましい発展を遂げている光駆動型反応では,E-アルケンからZ-アルケンへの異性化などの熱力学的に不利な反応が実現されている.今回Knowlesらによって,クロム触媒による内部アルケンから末端アルケンへの光駆動型異性化反応が報告されたので,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Neveselý T. et al., Chem. Rev., 122, 2650–2694(2022).
2) Zhao K., Knowles R. R., J. Am. Chem. Soc., 144, 137–144(2022).
3) Omoto M. et al., Tetrahedron Lett., 42, 939–941(2001).
4) Occhialini G. et al., J. Am. Chem. Soc., 144, 145–152(2022).

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© 2022 The Pharmaceutical Society of Japan
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