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新型コロナウイルスオミクロン変異体の立体構造基盤
東浦 彰史
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2022 年 58 巻 10 号 p. 977

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抄録

2019年に発生した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックが我々の生活に大きな影響を与えていることはご承知のとおりであり,発生当初より変異ウイルスによる感染の波が幾度となく押し寄せている.2021年11月下旬に南アフリカで初めて確認されたオミクロン変異体は、感染に機能するスパイク(S)タンパク質にこれまでになく多くの変異が蓄積されていた.日本においても,本稿執筆時点(2022年4月)ではオミクロン変異体BA.1系統がBA.2系統へと置き換わりつつあり,未だ予断を許さない状況である.このパンデミックの渦中に,構造生物学のコミュニティはX線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡単粒子構造解析の手法を駆使し,スパイクタンパク質の各種変異体を始め,抗体薬の主役となる各種抗体との複合体構造解析などに取り組み,立体構造情報を積み上げ続けている.本稿では,SARS-CoV-2のオミクロン変異体が示す広範な免疫回避の分子基盤を立体構造解析より解明したMcCallumとCzudnochowskiらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) McCallum M., Czudnochowski N. et al., Science, 375, 864-868(2022).

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© 2022 The Pharmaceutical Society of Japan
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