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SGLT2阻害薬は駆出率維持型心不全患者の身体機能を改善できるか?
米澤 龍
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2022 年 58 巻 7 号 p. 729

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抄録

糖尿病(DM)治療薬であるナトリウム依存性グルコース輸送体(sodium glucose co-transporter: SGLT)2阻害薬は,DMの有無にかかわらず,駆出率低下型の心不全(heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)の患者の心血管死亡または心不全悪化のリスクを低減させることが報告され,エンパグリフロジン,ダパグリフロジンの2剤に2021年心不全の適応が追加となった.例えば,DAPA-HF試験において,DM合併の有無にかかわらず心収縮能が低下した心不全患者に対してダパグリフロジンを追加することで有意に心血管死,心不全を抑制することが明らかとなっている.
一方で,左室駆出率が保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)は,心不全患者のうち30~60%を占め,有病率は高齢化に伴い増加傾向にある.HFpEFの患者は身体的制限も大きくなり,症状や身体機能,QOLの維持・改善は重要な治療目標になるが,これらの治療目標に対するSGLT2阻害剤の効果は明らかではない.
本稿では,2型DMの有無を問わず,HFpEFの患者に対して,ダパグリフロジンを投与することで症状,身体制限および運動機能が改善するかを検証したPRESERVED-HF試験の結果を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) McMurray J. J. V. et al., N. Engl. J. Med., 381, 1995-2008(2019).
2) Nassif M. E. et al., Nat. Med., 11, 1954-1960(2021).

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© 2022 The Pharmaceutical Society of Japan
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