ファルマシア
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NK細胞を利用しHIV感染症根治を目指す
岸本 直樹
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キーワード: 感染症, HIV, LRA, NK細胞
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2022 年 58 巻 9 号 p. 898

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抄録

ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus: HIV)感染症は,世界三大感染症の1つである.1981年に初めてのAIDS症例が報告され,1983年にはLuc Montagnier博士とFrançoise Barré-Sinoussi博士によってウイルスが分離・同定された(2008年にノーベル医学生理学賞を受賞).全世界のHIV感染者数は2020年末時点において3,700万人を超えており,HIV感染症が世界的に重大な公衆衛生上の問題であることに疑いの余地はない.HIVの発見から約40年が経ち,副作用プロファイルが佳良な抗HIV療法(ART)が臨床に供されているが,根治は達成されていない.この背景には,HIV潜伏感染細胞(リザーバー)を生体内から除去できない,という最大の問題がある.リザーバーは,自身のゲノムにHIVゲノムが組込まれていながらウイルス産生を停止している細胞である.ARTによって,血中ウイルス量を検出限界以下に保ちAIDS発症を抑えることは可能となったが,リザーバーは生体内に残存するためにHIV感染者は生涯にわたり服薬を続けなければならない.本稿では,リザーバーを生体内から除去する新しいアプローチとして提唱されている“shock and kill”においてnatural killer(NK)細胞を使用した研究を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Barre-Sinoussi F. et al., Science, 220, 868-871(1983).
2) Kim J. T. et al., Nat. Commun., 13, 121(2022).
3) Katlama C. et al., Lancet, 381, 2109–2117(2013).

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© 2022 The Pharmaceutical Society of Japan
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