繊維学会誌
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セルロース系吸着剤による酸及び酸性染料の吸着に関する研究
木村 光雄吉井 昇中島 康雄森田 実幸清水 慶昭
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1982 年 38 巻 3 号 p. T136-T141

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抄録

代表的セルロース系吸着剤(TChP及びCaN)に対する酸(HCl, CH3SO3H, C2H5SO3H, C6H5SO3H, C10H7SO3H他)及び酸性染料(CI Acid Orange 7, CI Acid Red 88, CI Food Yellow 3他)の吸着等温線,飽和吸着量及び吸着熱を35°Cで測定した。
これらの吸着剤は染色排水の処理のために開発されたものであって, transitional pore~macro poreの広範囲のサイズの細孔中にかなりの量の塩基性座席を持っている。酸の吸着に際して,まず塩基性座席がプロトン化され,次いでこれらのプロトン化した座席にアニオンが吸着する。酸及び酸性染料の吸着等温線はラングミュア型と考えることが出来るが,得られた飽和吸着量はアニオンのイオンサイズによって変化する,何故ならばイオン吸着と共に物理吸着も起ることと塩基性座席のアクセシビリティが細孔の大きさによって影響されるからである。
得られた-Δμ°はTCbPに対して10.5~13.6kcal/molであり, -ΔH°はTChPに対して6.5 (HCl)及び8.5~13.1kcal/mol (その他の酸と酸性染料)であった。
親和力及び吸着熱に対するCl〓の寄与が無いと仮定すると,プロトン及びアニオン類の吸着の熱力学的パラメーターを算出することが出来る。得られたイオン類の-ΔS°の値と水和との関係から,酸性染料によるタン白繊維またはポリアミド繊維の染色の場合と同様に水の構造変化の寄与が吸着に重要な役割を演じていると結論できる。

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