東京湾の盤洲干潟で, 1994年9月から1995年3月の期間にアサリの定位率と波浪による海底面の変動との 関係を調査した。試験には殻長26-28mmの大きさのアサリを用い,これらの生貝およびホルマリンで固 定した貝を砂中に3cmの深さに埋めた。 春期と秋期は生きアサリの方が固定アサリよりも定位率が高かったが,冬期には逆に低くなった。生貝の 累積定位率は0~40%,ホルマリン固定アサリは0~48%であった。 海底面の変動とシールズ数との関係をみると,シールズ数が0.12以下では海底面はほとんど変化せず, 0.12-0.16ではやや堆積傾向,そして0.20以上では侵食傾向となった。概括的には固定アサリや衰弱した生 きアサリの個数は海底面の侵食が2cmを越え,シールズ数で0.20以上になると減少する傾向を示した。砂 中深く自ら潜砂することによって留まることが出来る活力を持ったアサリであっても,シールズ数がしばし ば0.2を越える場所では次第に個体数が減少すると考えられた。