水産工学
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北海道日本海におけるフシスジモク群落の保全と利用方法
川井 唯史田嶋 健一郎
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2003 年 40 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

北海道日本海南西部の磯焼け地帯に位置する寿都町では,ウニの除去によりフシスジモク群落を造成して いる。そこに人工種苗のエゾパフンウニの放流を行なうと,群落の密度が徐々に低下する問題を抱えている 室内水槽でフシスジモクがエゾパフンウニから受ける部位別の被食圧を観察したところ,側枝と幼体は主枝 と下葉に比べて被食圧が高かった。寿都町におけるフシスジモクの生殖器床の出現時期を調査したところ, 7- 8月に出現した。またウニが分布する場所と除去した場所でフシスジモク幼体の出現状況を比較したと ころ,ウニを除去した場所だけで11月に幼体が出現した。これらのことからエゾパフンウニ人工種苗をフシ スジモク群落に放流した後,群落の本数密度が徐々に低下するのは,幼体が優先的に摂餌されて世代更新が 絶たれるためと仮定した。そこで密度が低下している群落において,幼体を保護して加入を促すために,生 殖器床が出現し始める7月にウニを漁獲した。その結果,漁獲後にフシスジモクの密度は回復した。よって フシスジモク群落にエゾパフンウニを放流して群落の密度が低下しても,数年に一回フシスジモクの繁殖時 期前に漁獲を行なうことで,群落は漁場として長期的に保全できるものと考えた。

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© 2003 日本水産工学会
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