福島医学雑誌
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症例報告
高齢発症てんかんが示唆された門脈大循環シャント脳症
吉原 章王佐々木 貴史大平 俊一郎安齋 高穂齋藤 直史
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2022 年 72 巻 1 号 p. 31-35

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抄録

要旨:高齢者に発症するてんかんは,焦点意識減損発作が多く,少量の抗てんかん薬が奏功し,脳卒中が原因であることが多いなどの特徴があり,有病率は1%程度と推定されている。非肝硬変性の門脈大循環シャント脳症は,中高年に多く発症し多彩な症状が出現するが,てんかん発作で発症することはまれである。今回,てんかん発作で発症した高齢の門脈大循環シャント脳症例を経験した。79歳女性がてんかん発作を来し搬送された。抗てんかん薬を投与し症状は速やかに改善したが高アンモニア血症が持続した。ウレアーゼ産生Klebsiella oxytocaが尿から検出されST合剤を投与したが高アンモニア血症は持続した。脳波で持続する全般性徐波を認めた。頭部MRIで両側淡蒼球にT1強調画像高信号域を認め,腹部CTで門脈から分枝し下大静脈へ直接流入する門脈下大静脈シャントを認めた。門脈大循環シャント脳症と診断し内科的治療で血中アンモニア値は正常化した。てんかん発作が高齢で初発した場合には,てんかん発作を来すさまざまな疾患と高齢発症てんかんとを鑑別する必要がある。超高齢社会の日本において,高齢者のてんかんに対する理解を深めることは重要である。

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© 2022 福島医学会
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