2022 年 72 巻 3 号 p. 127-133
要旨:症例は58歳男性,繰り返す右下腹部痛を主訴に当科を受診し,CTで認めた虫垂内部の糞石による症状と考え,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術後病理検査で虫垂神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumor:以下,NET)を認めたが,再発や転移のリスク因子はなく経過観察の方針とした。虫垂NETは稀な腫瘍で,後病理検査で偶発的に発見されることが多い。虫垂に発生する神経内分泌腫瘍は,本邦の取扱い規約においては組織学的異型度によって分類されるが,WHO分類では細胞増殖能による分類がなされており,本邦で発刊されている神経内分泌腫瘍のガイドラインではWHO分類に則った推奨術式のプロトコルが提示されている。今症例の検討にあたり, WHO分類の変遷に関して最新版のWHO第5版も参照して振り返りつつ,本邦での報告例について検討したため,ここに報告する。