1981 年 22 巻 2 号 p. 73-81
“熱”とは,日常頻繁に使われる用語の一つであるが,科学的にはエネルギーの一形態であり,極めて抽象的であるが故に,児童・生徒にとって形成困難な概念の一つと言える。このことは,科学史的にも熱概念の成立過程が紆余曲折を極めたことからも推察できる。筆者らは,このような熱概念を小~中の児童・生徒がどのように認識しているかを探るための基礎研究として“熱”に対するイメージを明らかにするため,次の2点より実態調査を実施した。(A)自由記述による熱のイメージに関する問題 (B) 熱の具体的なイメージに関する問題その結果,以下の事項が明らかになった。(1)児童・生徒は,熱をそれが持つ性質として“あつい”“温かい”とする傾向が強い。(2) 熱を温度と混同している児童・生徒が多い。(3)学年が下がるにつれ,高温物体のみが熱を持っていると把える傾向が強い。(4) 熱には形も色もないと考えている者は,小学生で平均41%, 中学生で平均48%である。(5)ある物体の温度上昇とその物体の重さには関係があるとする者は,小学生で平均73%, 中学生で47%である。