アメリカの科学教育界ではSTS (Science, Technology, and Society)運動が大いに注目されている。筆者はこのSTS運動の中心的存在であるアイオワ大学のDr.Yager教授の所に文部省の長期在外研究員として1991-92学年度に滞在し、文献研究とフィールド調査からSTS運動の核をなしているアイオワ大学で展開されているSTSアプローチの特質の鮮明化を図った。その結果次の点が明らかになった。1. 歴史的背景としては、全米で唯一最大の科学教育連合学会であるNSTAは1970年代後半よりリーダーシップをとって、『アメリカの科学教育の危機』克服のため、1980年代以降の科学教育はSTS教育にあるとし、1990年代以降のそれはさらに展開させて、『すべての人のためのSTS教育にある』と位置づけている。2. STSアプローチは、かっての『科学教育の黄金時代』と比較するとあらゆる観点でそれまでの科学教育研究の成果を踏まえた、アメリカの科学教育のニューパラダイムを提示しており、危機に立つ日本の理科教育界にとってもニューパラダイムとなりえるものと言える。