日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
ネオーラル®カプセル·内用液(シクロスポリン·マイクロエマルジョン前濃縮物製剤)の薬理学及び薬物動態学的特徴と臨床効果
西 葉子
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2001 年 118 巻 2 号 p. 107-115

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抄録

従来のシクロスポリン経口製剤(サンディミュン®カプセル·内用液)は, 消化管吸収過程において胆汁酸や食事の影響を受けやすく, 個体内, 個体間で吸収のバラツキが生じ易く, また, 一部に吸収が不良で十分な血中濃度を得難い症例が存在することが知られていた. ネオーラルは, これらの問題を克服すべく, 安定した薬物動態が得られるよう改良した新しい経口シクロスポリン製剤である. 有効成分であるシクロスポリンは, ノバルティスファーマ社(スイス)で開発された免疫抑制薬で, シクロフィリンと複合体を形成し, T細胞活性化のシグナル伝達において重要な役割を果しているカルシニューリンに結合してカルシニューリンの活性化を阻害する. これにより脱リン酸化による転写因子NFATの細胞質成分の核内移行が阻止され, IL-2に代表されるサイトカインの産生を抑制する. しかし, 脂溶性製剤であるサンディミュンは, 胆汁酸に乳化された後上部消化管から吸収されるため, 前述のように吸収が安定しない問題があった. このため吸収を安定させる目的で, ネオーラルは親油性溶媒, 親水性溶媒, 界面活性剤をバランスよく含むマイクロエマルジョン前濃縮物製剤として水溶性と同様の性質を呈するよう製剤的に改良した. この結果, 従来のサンディミュンに比べ, Cmax, Tmax, AUCなどの個体内および個体間のCV(変動係数)は減少し, 食事の影響も受け難いことが報告されている. また, 血中濃度が上がらない, 二峰性を示すなどの現象がみられるサンディミュン吸収不良例においても, ネオーラルはこれらの現象を改善させる. このように, ネオーラルにより安定した薬剤吸収が可能となり, またAUC0-4(absorption profile)やC2(投与2時間後の血中シクロスポリン濃度)などの新たなTDMパラメータも検討され, 臨床的にも成績向上が期待できる. ネオーラルは, 安定な吸収により, シクロスポリン治療に新たな可能性を広げる薬剤である.

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