日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
アンジオテンシンII受容体拮抗薬,バルサルタン(ディオバン®)の薬理学的特性および臨床効果
木村 雅昭三谷 博信磯村 八州男
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2002 年 120 巻 5 号 p. 353-360

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抄録

バルサルタン(ディオバン®)は,ノバルティスファーマ社で合成された選択的AT1受容体拮抗薬である.AT1受容体に対する選択性が高く,昇圧因子として作用するAIIに対して競合的に拮抗し,持続的な降圧作用を示す.バルサルタンの降圧作用を,ナトリウム枯渇マーモセットを用いて覚醒下かつ無拘束下で検討すると,バルサルタンの経口投与は心拍数には影響をおよぼすことなく,用量依存的に平均血圧を低下させ,長時間にわたりその作用を持続した.2腎性片側狭窄(2K1C)型高血圧モデルラット,自然発症高血圧ラット(SHR)などの動物モデルにおいても,バルサルタンの単回投与および連続経口投与は用量に依存した持続的な降圧作用を示し,休薬時に血圧のリバウンド現象は観察されなかった.また,脳卒中易発症性SHRおよび急性虚血性心不全モデルラットにおいて,バルサルタンは高血圧に伴う血管肥厚,心肥大,腎障害の発症·進展を有意に抑制した.さらに,高血圧症治療における他剤との併用を考慮し,バルサルタンと利尿降圧薬またはACE阻害薬との併用効果を検討したところ,SHRにおいて,バルサルタンと利尿降圧薬との併用は,バルサルタン単独投与に比較して降圧増強効果を示した.また,ACE阻害薬との併用では,NO合成阻害薬を投与したSHRにおいて生存率の延長が認められた.軽症~中等症の本態性高血圧症患者を対象に実施した第II相臨床試験において,バルサルタンは良好な降圧効果と高い安全性を示した.さらに,併用による臨床的有用性について,利尿降圧薬またはカルシウム拮抗薬投与により十分な降圧効果の得られない軽症~中等症の本態性高血圧症患者に対して,バルサルタンの併用効果を検討したところ,併用による優れた降圧効果と高い安全性が示された.副作用症状は軽度~中等度であり,重篤なものはなかった.第III相臨床試験では,本態性高血圧症に対して,類薬と同等以上の有用な降圧薬であることが示された.以上,バルサルタンは高選択的AT1受容体拮抗作用により降圧作用を示す安全性および有効性にすぐれた薬剤であり,有用な高血圧症患者の治療薬として期待される.

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© 2002 公益社団法人 日本薬理学会
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