日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
パーキンソン病治療薬,塩酸プラミペキソール(ビ·シフロール®錠)の薬理作用と臨床成績
河野 康子武内 正吾
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2004 年 123 巻 6 号 p. 429-440

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抄録

塩酸プラミペキソール(以下プラミペキソール)は,非麦角系のドパミンアゴニストで,薬理活性の強い左旋性の光学異性体をパーキンソン病(以下PD)治療に用いている.プラミペキソールは,D2受容体サブファミリー(D2,D3,D4)の中ではD3サブタイプへの親和性が最も高く,D1およびD5サブタイプに対する親和性は示さない.各種の実験的PDモデル動物において運動障害を改善し,線条体シナプス後膜のD2受容体刺激を反映する回転行動を誘発し,in vivo,in vitroの実験系で神経保護作用を示した.プラミペキソールの神経保護作用は必ずしもドパミンD2受容体刺激を介するものではなく,D3受容体刺激作用,抗酸化作用によるラジカルの発生抑制,Bcl-2増加とアポトーシス抑制,神経栄養因子増加などの多面的な作用機序が関与しており,神経保護作用の詳細についてはドパミンアゴニスト間で差異が示された.初期および進行期PD患者に対する有効性は,国際的な評価基準であるUPDRS(Unified Parkinson's Disease Rating Scale)PartII(日常生活動作)およびPartIII(運動能力検査)を主要評価項目として欧米で検討され,日本でも確認試験が実施された.その結果,プラミペキソール単独投与(L-DOPA非併用),L-DOPA併用投与のいずれにおいても有用性が示された.さらにプラミペキソールで治療を開始した場合はL-DOPAで治療を開始した場合に比較して,ジスキネジアの発現率が低く,ドパミントランスポーター標識化合物投与後のSPECT(Single-Photon Emission Computed Tomography)による画像診断で線条体ドパミン神経機能低下が遅延することが示唆されている.

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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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