日本薬理学雑誌
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特集:薬物依存の評価法と戦略
覚せい剤および麻薬に共通する依存関連分子の検索
山田 清文永井 拓中島 晶鍋島 俊隆
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2005 年 126 巻 1 号 p. 49-53

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抄録

薬物依存には中脳辺縁系ドパミン作動性神経系を中心とする報酬回路シナプスの可塑性が関与していると考えられている.我々はDNAアレイを用いて薬物依存関連分子を同定し,その病態生理学的役割について解析してきた.本稿では組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)および腫瘍壊死因子(TNF-α)の覚せい剤および麻薬依存における役割を解説する.tPAはモルヒネあるいはメタンフェタミンの処置により側坐核(NAC)で誘導され,主に神経細胞で発現する.tPA遺伝子欠損(tPA-KO)マウスではモルヒネおよびメタンフェタミンの報酬効果が減弱し,モルヒネの自発運動量増加作用およびメタンフェタミンの逆耐性にも障害が認められた.さらに,tPA-KOマウスではNACにおけるモルヒネ誘発性ドパミン遊離も障害されていた.tPA-KOマウスにおける行動およびドパミン遊離の障害は,tPAあるいはプラスミンをNACに補充することにより野生型マウスのレベルにまで回復した.したがって,tPAは覚せい剤および麻薬依存に促進的に作用するpro-addictive factorと考えられる.一方,モルヒネおよびメタンフェタミンにより誘導されるサイトカインTNF-αは薬物依存に抑制的に作用するanti-addictive factorとして機能する.すなわち,TNF-αはドパミントランスポーター(DAT)およびシナプス小胞トランスポーター(VMAT-2)を活性化してメタンフェタミン誘発性のドパミン遊離を抑制し,メタンフェタミンの報酬効果,弁別刺激効果および神経毒性を抑制する.以上の結果より,依存性薬物に対する感受性や薬物依存の再発脆弱性にはpro-addictive factorsとanti-addictive factorsの発現変化あるいは両者のバランス変化が重要な役割を果たしていることが考えられる.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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