日本薬理学雑誌
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シリーズ:ポストゲノムシークエンス時代の薬理学
テーラーメイド医療
鎌滝 哲也
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2005 年 126 巻 1 号 p. 60-65

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抄録

テーラーメイド薬物治療を実現するために,ポストゲノム時代の一側面として何が必要かを考えてみた.テーラーメイド医療の究極的な目的は個々の患者の遺伝子から患者の体質のタイプわけを行い,患者のタイプに合った適切な医薬品を適切な量投与して,有効で安全な薬物治療を実現することである.この目的に対して,代表的な少数の医薬品については目標を達成できたと言えるが,その達成度は未だ低い.実際には,テーラーメイド医療を真に地に着いたものにするためには,もっともっと困難なステップが待っている.これまでに知られている遺伝子多型だけでは体内動態が推定できない例が数多くある.この場合には,新規の多型の発見とエピジェネッティックスなどの未知の因子の解明を急ぐ必要がある.さらに,国家規模で医薬品に「異常な」応答性を示した患者の遺伝子を収集して,その遺伝子解析を進める必要があるだろう.次に,新たに見出された多型の臨床的な意義の検証が必要である.これにも手間と暇が必要だろう.多数の医師と患者の協力なしには実現しない.臨床現場に応用できるようにするには,先ず患者の遺伝子情報が得られなくてはならないし,次にこの遺伝子情報を集積するセンターが必要である.また,患者の遺伝子情報を臨床現場で引き出せるようなポケットサイズの情報処理端末が必要だろう.これにはパイロット的な技術開発を急がなくてはならない.技術的には可能だろうが,未だ現実的にはなっていない.この臨床までの応用には個人の遺伝子情報の保護のために,情報を引き出す時に指紋の認識などの様な方法で個人の特定を行わなくてはならないだろう.このような署名代わりのやり方で本人から遺伝子情報を引き出す「許可」が得られなくてはならない.そのためのIT技術の開発研究も急がなくてはならない.すでに,民間レベルではある程度走り始めているようだが,民間レベルでは限界がある.途中まで完成されてきている知識体系をテーラーメイド医療の原点に立ち返り,患者のために現実に使えるようにすること.これも大きな「ポストゲノム」と言えるだろう.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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