日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
実験技術
耳下腺腺房細胞の調製法
大久保 みぎわ川口 充
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 128 巻 4 号 p. 239-243

詳細
抄録

耳下腺の分泌機能を調べるにあたり,細胞の調製方法は実験の可否に影響を与える.我々は細胞を単離せず機能単位である腺房構造を残したまま腺房細胞を調製し実験に用いている.本稿では耳下腺腺房浮遊細胞の調製方法について紹介する.耳下腺はラットをエーテル麻酔下で心臓を穿刺して脱血した後摘出する.さらに,脂肪組織,結合組織,リンパ組織を取り除いて酵素液中で細切する.酵素液はコラゲナ-ゼ,ヒアルロニダ-ゼおよびBSAをDMEM培地に添加し作成する.細切した耳下腺は酵素液中で1分間に50回振盪し37℃で1時間培養する.この間20分おきにガス交換(95%O2,5%CO2)とピペットによる撹拌を行う.耳下腺腺房細胞はHepes(pH7.4)を含むHBSS(HBSS-H)にBSAを添加した培養液で3回洗浄し,さらに37℃の同液中で20分間培養する.最後に酵素処理後の耳下腺腺房をナイロンメッシュ(190 μm)にて濾過し大きさをそろえ,新しいHBSS-H中に浮遊させ実験に用いる.この方法で調製すると1から数個の腺房を持つ大小混在した腺房組織塊を得ることが出来る.また,DMEMにBSAや成長因子のEGFを添加した培養液中で保存することにより,調製8時間後までであれば生存率は90%以上となる.

著者関連情報
© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top