日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集:薬理作用の予測法におけるIn vitro試験法の有用性と限界
企業における安全性評価のためのIn vitro試験法の現状
川村 聡
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 128 巻 5 号 p. 289-292

詳細
抄録

安全性評価におけるin vitro試験法の利用目的は大きく括ると動物試験の代替法,スクリーニング試験法(あるいは短期試験法),毒性発現機構の解明,ヒトへの予測性の向上の4つが考えられる.これらの目的のために種々のin vitro試験法が開発されてきているが,開発推進の原動力として,動物福祉,医薬品・農薬等の開発効率の追求,新技術の開発・発展,ヒト組織の利用環境の整備が挙げられる.代替化の取り組みが最も進んでいるのは皮膚腐食性試験であり動物実験との相関性が認められ実用レベルに達しているが,汎用性の点で課題を残している.近年の医薬品開発は成功確率の向上と開発期間の短縮が課題となっており,高精度・高速スクリーニング法開発への期待は大きい.動態研究においてはヒトCYPのような的確な標的を利用できるようになりスクリーニング法開発に進展がみられる.毒性研究においてはAmes試験という有用な方法もあるものの,新規な方法の開発に目覚しい進展はない.毒性発現機序解明という点では,トキシコゲノミクスをはじめとする網羅的な解析を可能とする技術などの発展があり,機序解明の有力な手段となることが期待される.これまでに重篤な副作用がヒトにおいてはじめて顕在化する事例が知られている.近年,ヒト組織を利用した研究をおこなう環境が整備されてきており,毒性発現機序が解明されヒト組織での反応をin vitroで解析することにより,ヒトへの予測性が向上することが期待される.

著者関連情報
© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
次の記事
feedback
Top