日本薬理学雑誌
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総説
グリア細胞を標的とする医薬品の創製
工藤 佳久小泉 修一和田 圭司橋本 謙二
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2007 年 130 巻 3 号 p. 185-192

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抄録

この総説では多様なグリア細胞のうち,アストロサイトに焦点を合わせた研究の成果を中心として医薬品開発への手がかりとしての重要性を解説した.小泉はアストロサイトのP2Y1受容体を制御し正常に維持する薬物が脳虚血等の酸化ストレスによる神経細胞およびアストロサイトの機能障害保護作用を持つ可能性を示唆した.工藤はアストロサイトが保有するグリオトランスミッターやサイトカインを遊離させる薬物の探索によって新しい中枢神経作用薬を発見することが可能であることを示唆した.和田はグリア細胞に存在するGPCRの研究が中枢神経系薬理学的研究に極めて重要な意味を持つことをNtsr2,PAC1およびVPAC2を実例として示した.橋本は統合失調症発症のグルタミン酸仮説の要になるNMDA受容体機能低下の原因がグリア細胞で合成されるD-セリンの減少やキヌレン酸の増加にある可能性を示唆し,統合失調症の新しい治療薬の開発にはグリア細胞に焦点を当てることが重要であることも示唆した.

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© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
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