日本薬理学雑誌
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治療薬シリーズ(26) 抗不整脈薬
抗不整脈薬の基礎と今後の展開
―基礎:抗心房細動治療薬の研究開発―
橋本 吉弘
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2008 年 131 巻 6 号 p. 452-456

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抄録

著名人が心房細動(AF)による脳梗塞に罹患したニュースが流れ,AFが脳梗塞に繋がる疾患として注目されている.高齢になればなるほど罹患率が高くなることから,特に高齢化社会となった日本において充分に対処すべき疾患である.Sicilian GambitによるAF治療戦略では,興奮間隙の小さいリエントリがAF時に複数同時に存在するため,このリエントリを阻害あるいは停止させることが有効であること,その効果的な方法として不応期を延長させることをあげている.不応期延長にはNaチャネルを遮断する方法とKチャネルを遮断する方法がある.現状では薬剤そのものの副作用や,心室に影響することが問題となっており,薬物治療の満足度は高くはない.このため,安全で安心して簡便に使用でき著効を示す薬剤の登場が求められている.最近の薬剤開発状況をみると,既存薬の副作用回避に注力したマルチチャネル遮断薬,IKurのような心房に局在するチャネルに注目し心室への影響回避を目指したINa+IKur+Ito遮断薬やIto+IKur遮断薬,機械的刺激によって機能するチャネルに注目したSAC遮断薬などがある.数年~10年後には薬物治療の選択肢が増え,新たな治療ステージを迎え,多くの患者に利益をもたらしているものと思われる.

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