2008 年 132 巻 1 号 p. 22-25
タンパク質リン酸化酵素は多様な生体機能を調節する最重要なタンパク修飾反応で,これらの酵素に特異的な阻害薬は,複雑な生命現象を解明するためのツールとなるばかりでなく,抗癌薬等の臨床薬としても期待されている.タンパク質リン酸化酵素はいずれもATPを基質とすることから,ATP結合部位が低分子化合物の標的となり得るが,その立体構造の多様性を利用して様々な特異的阻害薬が合成されている.本稿では,タンパク質リン酸化酵素阻害薬開発の歴史を振り返るとともに,ケミカルバイオロジーの観点から,その将来像を俯瞰する.