日本薬理学雑誌
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総 説
ファーマコゲノミクス(PGx)の普及における課題
鶴尾 隆
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2008 年 132 巻 1 号 p. 31-38

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抄録

近年,個別化医療に向けてバイオマーカーを用いた薬剤の感受性や副作用との相関を調べるファーマコゲノミクス(PGx)研究が多くおこなわれており,一定の臨床上の有用性が示されたバイオマーカーが複数報告されている.PGxとは,このバイオマーカーを用いて患者個々の遺伝的特徴を把握し,個々の患者に最適な薬剤を選択し,最適な用法用量で投与することを目的の一つとしている.PGxに関する基盤整備が進んでいる海外と比較すると,日本の現状は遅れ気味と言わざるをえない状況であり,バイオマーカーを用いる診断法を日常診療のフローに組み込む体制を整えるには超えるべき課題が多い.JMCoEプログラム(Japan Molecular Center of Excellence)とは,全国の医療施設や受託検査センターなどを対象に遺伝子検査のネットワークを構築し,遺伝子検査の標準的な検査方法(アプリケーション)の開発,遺伝子マーカー検査の運用方法の標準化を推進する活動である.JMCoEプログラムは推進委員会(委員長:三重大学 登 勉 教授)によって運営されており,著者も委員の一人である.本プログラムの活動の一環として,2007年8月25日,遺伝子検査の標準化やPGxに関心のある多数の参加者(医療関係者,臨床検査センター,試薬メーカーなど)が集まり,「第1回JMCoEネットワーク学術フォーラム(JMCoEプログラム推進委員会およびロシュ・ダイアグノスティックス株式会社の共催)」が開催された.本稿はその際のPGxに関するシンポジウム:「ファーマコゲノミクス(PGx)の普及における課題」の内容をまとめたものである.オンコロジー分野における抗がん薬治療に的を絞り,PGx普及における日本の現状や今後の課題について,基礎研究者と臨床医という異なる観点から二人の先生にお話しいただいたのち,その課題解決に向け討議した.

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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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