日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
総 説
慢性腎臓病(CKD)治療薬の現状と新たな可能性
丸山 彰一
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 132 巻 3 号 p. 166-172

詳細
抄録

現在,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)対策が世界的に精力的に進められている.わが国でも日本腎臓病学会が中心となり,関連する各学会とも連携しながらCKD対策に取り組んでいる.CKDに対する理解を深め適正な治療をより多くのCKD患者に施行するために,昨年CKD診療ガイドが作成され公開された.本稿ではこのガイドラインに沿い,CKDに対する治療薬につき概説する.CKDは進行すれば透析医療を要する末期腎不全に至るというのみならず,比較的早い段階から心血管疾患を合併する危険が高いことが明らかとなってきた.よってCKD治療の第一の目標は末期腎不全への進展を阻止することであり,第二の目標はCVD(caldiovascular disease:心血管系疾患)の発症を抑制することとなっている.このふたつの目標を達成するためには,一般内科医(かかりつけ医)と腎臓内科専門医が連携して集学的治療を行うことが求められる.まずは生活習慣の改善や食事療法を十分行う必要がある.そして,多くの場合は薬物療法も並行して行うこととなる.薬物治療としては,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系抑制薬を中心とした降圧治療が重要な位置を占める.RAA系抑制薬は尿蛋白を減少させる目的でも積極的に用いられる.さらに,スタチンを中心とした脂質代謝異常症に対する治療,エリスロポエチン製剤を用いた適正な貧血治療,経口炭粉吸着薬を用いた尿毒症治療などが提唱されている.糖尿病は透析導入患者の40%を占め,慢性糸球体腎炎の25%を大きく上回っている.血糖コントロールを中心とした糖尿病対策もCKD対策の大きな柱のひとつである.また,CKDにおいては特に腎排泄性の薬剤や腎障害を来しうる薬剤を使用する際には特別の注意が必要である.CKD診療ガイドが示されたことにより,CKD治療に対する大きな方向性は示された.しかし,具体的な治療方法に関しては依然多くの課題が残されている.CKD治療に関しては,今後さらなる研究が必要である.

著者関連情報
© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top