日本薬理学雑誌
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特集:漢方薬理学:基礎医学エビデンスから臨床効果まで
アトピー性皮膚炎に対する補中益気湯の臨床的評価:二重盲検解析
小林 裕美
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2008 年 132 巻 5 号 p. 285-287

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抄録

アトピー性皮膚炎は症例毎に異なる悪化因子が関与するため,治療に個別のアプローチが必要である.悪化因子が比較的単純で除去しやすい例は,標準的治療のみで充分軽快するが,複雑な因子が関与し長年にわたる経過のうちに悪化の方向に向かう一群も存在する.このような例に対して,私たちはまず漢方で重視する「食」について指導し,なお改善しない場合に漢方方剤内服を併用してきた.アトピー性皮膚炎に用いる漢方エキス製剤は多岐にわたり,それぞれの薬理作用の理解のもとに使用する.小児,成人ともに気虚を伴う例に用いる補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は,内因を改善する補剤の代表方剤である.補中益気湯のアトピー性皮膚炎治療における有用性を明らかにするため,私たちは,内服前後における血中サイトカイン値の変動を検討するなど症例集積研究を重ねてきた.さらに最近,プラセボを対照薬とした多施設共同無作為化二重盲検比較試験を行った(Evidence-based Complementary and Alternative Medicine 2008; doi: 10.1093/ecam/nen003).対象は,4週間以上の標準治療にても緩解しない難治症例でかつ,補中益気湯の使用目標となる気虚判定表のスコアで気虚と判定された例に限定した.試験開始前と同じ治療内容を継続し,補中益気湯またはプラセボを24週間投与し,皮疹の重症度の推移のみならず,外用剤の使用量を点数化し,また安全性についても検討した.3カ月後では有意な差はみられなかったが6カ月後の結果において補中益気湯群で外用量の有意な削減効果がみられ,皮疹が消失した著効例も補中益気湯群に多く,増悪例は有意に少なかった.

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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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