日本薬理学雑誌
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実験技術
マウス排尿機能の無麻酔・無拘束・昼夜連続測定法
山本 巌甲斐 菜穂子白崎 哲哉副田 二三夫高濱 和夫
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2009 年 133 巻 6 号 p. 332-336

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抄録

排尿障害は,超高齢化社会を迎え患者数が増加の一途をたどっている疾患である.しかしながら,排尿障害治療薬の開発は他分野に比べて遅れている.その一因として,排尿機能に関する基礎研究の遅れがあり,排尿障害治療薬の薬効評価系を含む実験手法が十分開発されていないことが挙げられる.その実験手法の一つに,無麻酔・無拘束の動物を用いた昼夜連続の排尿活動測定があり,これまでラットにおいてはよく検討されてきたが,マウスの微量な尿を正確に測定することは困難であり,未だ数報の報告にとどまっている.そこで,我々は既報の問題点を考慮し,これらとは独立して,マウスにおいて昼夜連続して排尿活動を記録できる新しい方法を開発した.この新規測定システムは,マウス用代謝ケージの下に採尿用のロートを設置せず,尿と糞を天秤上にセットしたプレート上に直接落下させ,その重量をコンピューターで処理するというものである.ここまでは既報に見られるが,我々の方法は尿のデータのみを抽出するためのソフトウェアを独自に開発し,これにより以下の詳細な解析が可能になったことが特徴である.1回ごとの排尿量,排尿時刻および排尿回数を昼夜にわたって正確に測定できることに加え,これまで評価が困難であった,1回の排尿における尿重量の経時的推移や1回の排尿にかかる時間,1回の排尿における排尿速度が測定できるようになった.また,24時間以上連続した測定が可能であるため,12時間交替の明暗サイクル下において,マウスの活動時間帯である暗時間に排尿活動のピークがくる日内変動をとることが見出せた.さらに,1回の排尿の初期速度が雌雄のマウスで違うことなど,排尿機能における雌雄差も見出せた.本システムは,遺伝子改変動物や病態モデル動物を用いた測定や薬効評価への応用が期待され,今後の研究に広く貢献すると考えられる.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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