日本薬理学雑誌
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実験技術
新規ラット前立腺肥大モデル:ラット間質肥大モデル
森 文隆阿部 正章
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2009 年 134 巻 6 号 p. 325-329

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抄録

ヒト前立腺肥大の病態モデルとして,種々モデルが薬効評価に使用されている.ラットにおいては,テストステロン(さらにはエストラジオール添加)負荷による前立腺肥大モデルが汎用されているが,前立腺の組織変化をみた場合,ヒト病態組織像との乖離が大きい.ヒトの前立腺肥大の組織像は,平滑筋やマトリックス成分など,主に間質成分より構成され,いわゆる間質肥大と言われているのに対し,ラットにおいてはそもそも前立腺の構成成分が腺成分優位であるため,ホルモン負荷により腺成分の肥大が顕著な組織像を呈する.このように,ヒトでの前立腺組織像を反映するような間質肥大を呈する前立腺肥大症の動物モデルがないために,その発症メカニズムの解明はおろか,ヒト前立腺肥大で特徴的な間質肥大に対する薬剤の有効性を評価することも難しい現状である.そこで,筆者らは,ラット胎仔の未分化な前立腺組織である泌尿生殖洞(urogenital sinus:UGS)を成体ラットの前立腺被膜下に移植するという手法を用いることで,そのUGSがヒトの前立腺肥大症組織と同様に間質肥大を呈するモデルを作製する事に成功した.その移植UGSは間質肥大を呈するだけでなく,その間質性成分の割合や,間質肥大の原因とも考えられている増殖因子の発現状況なども,ヒトの前立腺肥大での報告と同様な傾向を示した.さらには,抗アンドロゲン薬の効果についても,臨床での効果に類似した結果が得られた.これらの結果より,今回作製した新規前立腺肥大症モデルは,これまでにない臨床の前立腺肥大の病理組織を反映したモデルであり,今後,前立腺肥大症の発症メカニズムの解明に貢献するだけでなく,現在の治療体系を大きく変えうる新薬の創製に貢献するモデルとなることが期待される.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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