日本薬理学雑誌
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総説
三量体Gタンパク質シグナリングを介した心不全発症の分子機構
西田 基宏大場 三奈仲矢 道雄黒瀬 等
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2010 年 135 巻 5 号 p. 179-183

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抄録

慢性的な高血圧や大動脈狭窄,あるいは心筋梗塞などは,心臓の心不全への移行を決定する重要な因子である.心臓が心不全へと移行する過程で形態や構造上の変化(リモデリング)が生じる.心臓リモデリングの初期の過程において,ノルアドレナリン,アンジオテンシン(Ang)II,エンドセリン-1などの神経体液性因子が関与することが示唆されている.これらのアゴニストは,細胞膜上の7回膜貫通型受容体(GPCR)を刺激し,三量体GTP結合タンパク質(Gタンパク質)を活性化する.Gタンパク質には4つのファミリー(Gs, Gi, Gq, G12)が存在し,それぞれが独立したシグナリング経路を活性化する.現在までに,遺伝子改変動物を用いた数多くの研究が進められ,それぞれのGタンパク質シグナリングの役割が次第に明らかになってきた.ここでは,Gタンパク質の4つのファミリーが心肥大・心不全形成で果たす役割について紹介する.Gタンパク質を介したシグナリングの知見は,Gタンパク質が受容体によって活性化されることから,新たな心不全治療薬の開発につながるものと期待される.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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